沼津⇔戸田⇔土肥航路(戸田運送船)

この航路は、かつて戸田運送船が運航していたクラフト航路である。

そもそも、この航路は西伊豆の戸田に本拠を置く戸田運送船が沼津⇔戸田で運航していた純客船航路をクラフトに変更
したものであるが、一時期はほぼ同じ航路を運航していた伊豆箱根鉄道と共同運航体制を取っていたこともあり、平成15
年の伊豆箱根鉄道撤退後は土肥まで延航していた。

そんな本航路に1度目の撤退の話が持ち上がったのは平成23年末のことであった。この時は便数を減らすことで何とか
存続することができたが、今年(平成26年)夏、改めて定期便廃止の話が持ち上がってきた。

新聞情報によると平成16年度の乗船者数が約43,000人あったものが観光客の減少や道路の整備等によって平成24年、
25年度には約15,000人と1/3に減少しており、一方で燃料油の高騰等に悩まされていたものと思われる。
そのため、補助金の増額について交渉を行っていたものの不調に終わったことで、今回の撤退に繋がってしまった。

尚、本航路は平成26年8月31日で定期便の運航を終了、翌日からは不定期便に変更となった。
完全に消滅した航路ではないものの、定期船がなくなってしまったことに一抹の寂しさを覚える今日この頃である。


「ホワイトマリン」

本船は、昭和63年に静岡県の飯作造船所で建造されたクラフトである。飯作造船所は西伊豆町の田子にある造船所で
あり、「みやがせ21」(公益財団法人宮ヶ瀬湖周辺振興財団)を日立造船から受注し、建造した実績がある。

本船は元、関西急行フェリーの「ふぇにっくす2」(昭和50年、鈴木造船所)を僚船として活躍していた時期もあったが、後述
する「ホワイトマリンU」の就航に伴い引退、海外に売船されている。


戸田港に係船中の「ホワイトマリン」(平成18年2月)。この時、本船はドック明けでピカピカであったが、休航中のため航行
する姿を見ることは叶わなかった。


「ホワイトマリンU」

本船は、平成19年5月に愛知県の鈴木造船所で建造されたクラフトである。本船を建造した鈴木造船所は三重県・四日市
の鈴木造船所とは違う造船所であり、FRP製の漁船を数多く手がけている会社である。
そんな本船であるが、19総トンの小型船舶枠に収まるように建造されており、広いデッキが特徴である。

尚、本船には1回目の撤退話がわき上がった平成23年末に沼津⇒土肥間で乗船している。その際の乗船客は午前中の
便であったものの管理人と観光客3人の計4人であり、観光客3人は戸田で下船したため戸田⇒土肥間は管理人一人とい
った状態でその苦境ぶりがよくわかる航海であった。そのため、今回の定期便廃止もやむなしであったと考えている。

定期便廃止後、本船は不定期での運航とチャータークルーズに活路を見出そうとしている。
本船が緊急時に地域の足として活躍できるよう、管理人としても良い方向に向かうことを願ってやまない。


沼津港に入港してくる「ホワイトマリンU」(平成23年12月)。本船は沼津港の特徴的な防潮水門「びゅうお」の下をくぐって
入港してくる。


沼津港で停泊中の「ホワイトマリンU」。幅広の船体を持ち、耐航性を高めているがこれでもれっきとした19総トン小型船
舶枠クラフトである。


土肥港出港中の「ホワイトマリンU」。後部客室はデッキとなっており、平水区域で153名、限定沿海でも123名という、この
サイズでは最大の旅客定員を持つ。そのためか、ブリッジ後部のデッキには通勤電車のようにつり革が設置されている。


土肥港を出港していく「ホワイトマリンU」とエスパルスドリームフェリーの「富士」。土肥港は外洋に接続しており、本船も港
を出てすぐ波にもまれていた。天気の良い日であれば、富士山が見える航路でもあっただけに残念である。


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